学生時代の勉強について 各論

 

 

アメリカを目指す全ての医学生が立ち向かわなければいけない壁、USMLE.

 

先日3/27Step 1を受験し、261点で合格しました。

 

誰かの役に立てば良いと思い、勉強に関して考えることをいまのうちに書いておこうと思います。

質問ある方は大歓迎です。

 

勉強総論と勉強各論を考えたのですが、総論を書く前に各論がかけてしまったのであげておきます笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学生時代の医学の勉強に関して、経験から次のことが言えると思います。

 

 

 

勉強の3要素

新知識のインプット

既習知識のアウトプット

忘却を最小限に抑えること

 

 

 

 

そしてこの3つそれぞれに対応する教材が存在します。僕はこの3つを中核として勉強を進めました。

 

 

 

① => The First Aid for USMLE Step 1 (2015, 2016, 2017)

② => Online qbanks (USMLE world, Kaplan qbank)

③ => Anki

 

 

 

 

以下詳述します。

 

 

 

① The First Aid for USMLE Step 1

USMLE Step 1を受験するならばなしには語れない本。かつ、筆者の現在のあらゆる医学的知識の礎となっている本。これほど簡潔かつ網羅的に疾患の病態生理、薬の作用機序を説明した本を私は知りません。まさにbeauty.

ただ、最も大切な病態のメカニズムが本当にさらっと、ひとことで片付けられていたりするので、初学者は読むのに苦労するかもしれません。Step 1を受験しない人も、前半の基礎医学について読むと内科学の理解の度合いがぐんと上がると思います。個人的にmicrobiologyの章は白眉。

 

Webでよく見る勉強の王道は、このFAの余白に知識を書き込むこと、そしてそれを何度も読み、内容を全て覚えてしまうと言うことです。僕も結局通しで3-4周読んだと思いますが、後述するAnkiを使ったこともあり、この本に書かれている内容は結構覚えていたと思います。

 

しかし、僕個人的には書き込み読み込むという勉強法はあまり合っていなかった。これは人によると思うんですが、僕は新しい知識を勉強を本に書き込むと、なんだかそれだけで満足してしまいあまり読み返さない人でした。あと、自分の手書きの文字が内容としてパッと入って来ず、活字より読みにくいのであまり意味がなかったのです。

 

加えて、この本に頼りすぎない、この本に振り回されないのも重要です。5年次の受験予定日直前にはこの本をはしからはしまで暗記しようと思って読んでいましたが、模試の点数はあがりませんでした。重箱の隅をつつくようなfactもたまに書いてありますが、はっきり言って殆ど出ません。

 

それよりも基本的な事項を理由付けして、病態生理をきちんとおって、それごと覚えてしまう、という方が良いでしょう。闇雲に暗記するのではなく、なぜか?を常々考えましょう。

 

 

eg. Alzheimer disease では τ proteinの沈着が見られる。

これを記憶して見ましょう。

 

ダメな例)  

Alzheimer ではτ protienか。そーゆーものなんだ。暗記暗記。

 

良い例

Τ proteinの役割は細胞内微小管の安定化。Alzheimerでは神経細胞の中のτ proteinhyperphosphorylationが問題となる。過リン酸化されるとτ protein paired helical filament (PHF) となり、これがAlzheimer神経細胞に見られるneurofibrially tangles の原因となる。PHFとなったτ protein は微小管をうまく安定化できず、結果神経細胞の細胞内輸送が障害される。だから神経伝達物質の輸送がうまくいかず認知症になる!!

 

 

この例をみてもわかるように、きっちり理由まで含めて覚えるのははっきり言って面倒くさいです。でも少しここで遠回りをしておけば、必要事項を覚えやすく、かつ思い出しやすくなりますし、似たような事項とも関連づけるのが容易です(この例だとたとえば、frontotemporal dementiaは同じような機序でおこるので、τ proteinが見える、とか)

 

 

② Online q-banks

USMLEのような試験では、inputだけ増やしてもどうしようもないところがあり、実際に問われるのは知識の多さではなく、知識の運用法である。知識のアウトプットの練習として、問題をたくさん解くことは非常に(ある意味最も)重要。

Q-bankとしては、USMLE World, Kaplan qbanks, USMLERx3つが有名。難易度的にはUW Kaplan >> USMLERx といったところか。あと、USMLEの作問機関が作っているNBME, UWの作っているUWSAという模試もやると力試しになります。

どれに取り組むにせよ、解説まできちんと読み、重要事項や気づかなかった点をAnkiカードにしてしまうという勉強法が良い気がする(Ankiカードの作り方についてはAnkiの項で詳述)

 

5年次ではUSMLERx 1周、USMLE World 3周、Kaplan qbanks 0.8周に取り組みました。今思うとUW3周したのは、問題ごと覚えていた問題も多くあまり意味がなかったとは思います。2周くらいでいいんじゃないでしょうか。NBMEの模試は4つくらい受け、得点は

NBME11: 228

NBME15: 243

NBME13: 237

NBME17: 237

でした。

 

6年次にはUSMLE Worldをもう1周、Kaplanを1周しました。模試は3つ受け、

UWSA1: 264

NBME18: 246

UWSA2: 251

でした。

 

 

 

③ Anki

暗記補助アプリ。簡単にいうとiphone版フラッシュカードで、フラッシュカードの問題に対して、覚えていないカード、答えられるが身についていないカード、普通に覚えたカード、楽勝なカード、から選択することで、カードの学習間隔が変わっていきます。この方法であらゆる知識を長期記憶として脳に保存し、「忘れることを、忘れる」ことができるわけです。

具体的には、FAや自分で勉強したfactsをカードとして加えていけばよし。コツとしては、でも述べましたが、なるべく11答のようなカードを作らないこと。病態生理まで暗記できるようなカードを作ること。例えばさっきのの例だと、

 

 

ダメなAnkiカードの例)

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()

What can be seen in Alzheimer disease microscopically?

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()

Tau protein

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良いAnkiカードの例)

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()

What is the function of τ protein? Associated diseases (2)

 

Provided this function, what can be explained?

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()

Tau protein: binds to and stabilizes microtubles

 

Alzheimer dementia (AD) & frontotemporal dementia

 

If tau proteins are hyperphosphorylated -> paired helical filament (PHF) tau = major component of neurofibrially tangles -> CANNOT bind to microtubules so impairment in neuronal transport systems ->  # of tangles associated /c degree of disease

 

UpToDate:

Tau is a microtubule-associated protein that aids in microtubule assembly and stabilization.

In AD, tau becomes hyperphosphorylated and aggregates to form paired helical filament (PHF) tau, a major component of neurofibrillary tangles within the neuronal cytoplasm. The accumulation of this altered protein is toxic to neurons in experimental models. In addition, transmission of pathologic forms of tau between neurons has been proposed to account for the spread of AD in brain, which follows a distinct progression across brain regions as AD advances

 

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良い例では、

(1) 病態生理に重きを置き、理由付けをしている

(2) 改行、太字などを用いて覚えるべきところをわかりやすくしている

ことがわかりますね。この方が断然覚えやすいです。

 

 

こんなふうにしてqbank, FAの内容などをカードにして覚えていきましょう。

また、Ankiに関してはYousmle.comAlecの記事が非常に参考になります。

 

 

 

その他

そのほかに手をつけた本も上げて置きます。ほとんどは通読していない、つまみ食いだけです。

 

● Rapid Review of Pathology (Goljan)

American 三苫, American KSR, 呼び名はいろいろありますが、米国のUSMLE のカリスマ講師、ゴルジャン先生直筆の教科書。FAの副読本的立ち位置と勝手に思っている。結構細かく病態生理まで書いてあって参考になる。箇条書きなので知識が繋がりにくいのが個人的には難。

 

● Biochemistry (Lippincotr’s Illustrated Reviews)

生化学の読みやすい教科書。生化学ははじめとっつきにくいですが、訳がわかってしまうと楽しくなります。僕はFAの生化学の項と、必要に準じてこの本を参照していました。図がわかりやすいので図ごとAnkiにつっこんでしまってもいいかもしれない。

 

● Principles of Pharmacology (Golan)

ハーバードで薬理の教科書として使われているという例の本。たしかに学生で必要な薬理の知識が詳しく載っていてためになる。図もわかりやすい。

 

● Physiology (Linda Costanzo)

生理学のイチオシ。医学部3年のときにこの日本語版を読んでいましたが、説明がクリアカットでとてもわかりやすい。初学者には最適。ただクリアカットすぎて、たまに重要事項が抜けていたりする。けれどはじめは問題にならないので良いと思います。

Eg. VSDではcyanosisにならない。=> 実際はなる。欠損孔が大きいとLVから肺に駆出される血液が多くなりV/Q mismatchを引き起こすため。

 

USMLE Step 2 CK Secrets

国試・マッチング対策を日本語でするのがいやで読んでいた本。Step 1に関しても、最近臨床的な問題が増えているから、Step 2 CKの知識が役に立つ部分は少なくないと思います。

 

研修医当直御法度 第6

通称赤本。研修医が救急科当直で出会いそうなsituationの対応と陥りがちなpitfallについて記してある。とてもわかりやすく書かれており、1ページあたりの内容も多くはないので、一冊丸ごと覚えるような勢いで読んでもいいかも知れない。ここで読んだ知識は国家試験の外科・救急領域でもかなり役に立ちました。

 

マッチングの過去問

僕の志望した病院は、全問英語でしかも試験の内容も難しかったので、過去問を勉強するだけでとても勉強になりました。僕の頃は筆記+面接だったのですが今年から面接だけになってしまうようで少し心配です。

 

 

 

 

以下、読んでないけど参考になるかも知れない本

内科レジデントの鉄則……聖路加の教育法

● OCH救急マニュアル……沖縄中部の教育法

● Step beyond Resident……読み物で読みやすい

キクタ……日本語で医学的知識がある程度ある人におすすめ

 

ご意見などありましたらお聞かせください。